会計事務所に”商圏”はなくなる?広がる遠方顧問先へのオンライン支援とその実態
いつもメルマガをお読みいただきましてありがとうございます。
本日はリモートでの顧問先へのサービス提供についてお伝えさせていただきます。
コロナとともに急速に普及したオンライン会議システム。会計業界でも緊急事態宣言下では、顧問先との打合せを臨時でオンラインに切り替える事務所が増加しました。しかし、多くの事務所では緊急事態宣言解除後、顧問先からの要望を受け、訪問型、または来所型での打合せに戻っています。
一方でオンラインによる支援を定着させ、事務所から離れた地域の顧客へサービス提供を広げる会計事務所も、少しずつですが出てきています。
目次
遠方の顧問先支援はどのように行われているのか?
一例ではございますが、東京の事務所が北海道、山口県の顧客を支援したり、他の東京の事務所が秋田県、京都府、群馬県の顧客を支援したり、愛知県の事務所が滋賀県の顧客を支援したりしています。近隣県顧客へのサービス提供は従来からも一部ありましたが、今は新幹線や飛行機を利用しないと訪問できない地域へのサービス提供も広がってきています。
遠方の顧問先を持つ会計事務所ではどのようにサービス提供をしているのでしょうか?
遠方の顧問先との打合せは、お付き合い初期は訪問し、通常の定期打合せはオンラインで、決算前検討会や税務調査時には訪問する、という形をとっている事務所が多いです。
毎月の会計監査もオンラインで成立しています。クラウド型の会計ソフトが普及してきた為、会計監査はクラウド上で行い、不明点などがあればビジネスチャットでやりとりし、打合せまでに試算表を完成させることが可能です。
記帳代行等のアウトソーシング業務については、顧問先から帳票のスキャンデータを共有してもらうか、郵送してもらうことで対応しています。
Withコロナにおける顧客のニーズの変化
以前は「何かあった時にすぐに会社に来てもらえる距離の税理士さんにお願いする」というのが一般的でしたが、withコロナにおけるオンライン会議の普及や慣れに伴い、「税理士さんとの打合せもオンラインでも良い」と考える経営者の方も出てきています。
弊社で実施したアンケートでは直接の面談を希望する方が82%とまだまだ多いものの、16%はオンラインの面談と回答をしていました。(複数回答可のアンケート)
また、実際に顧問税理士とのオンライン面談を開始している経営者に顧問税理士とのコミュニケーション方法についてヒアリングをすると、
・通常はチャットでよいと思う。年に何回かは直接会うのが良いと思う。
・最初は直接会って、その後毎月のzoom面談をしている。1回は直接会って話をしたいが、それ以降はzoomで月に1回打ち合わせ、何か突発的にあった場合はチャットで、であれば、こちらも無駄な時間を使わないし税理士も使わないので良い。
・もともとは対面で色々な話をしながら関係性を築いてきたが、コロナになってzoomが多くなってからはこれでもできないことはないと感じている。ただ電話、メールのみだとストレートに伝わらない、思いが通じるのか?と感じる。対面でできないにしてもzoomなどの顔が見えて話している雰囲気、人柄が見えるような形が理想だと思っている。
・zoomでコミュニケーションをとっても大丈夫ですし、対面でも大丈夫。ただ、現在は慣れてきてしまっているので、zoomの方が良い。対面で数字の話をされた際に、手元に資料がなかったら困るので
・最初は対面が良いかと思っていたが、コロナ禍なのでzoomやチャットで十分だと思う。
と、直接の打合せとオンライン打合せを適宜組み合わせてコミュニケーションをとっていくのが理想、と考えている回答が多数でした。
会計事務所に商圏はなくなるのか?
実際に遠方の顧問先対応をしようと思うと、お付き合い初期や決算前検討会時、税務調査時の出張対応が必要になります。多くの会計事務所では遠方出張に対応していないので、すぐに遠方の顧問先対応をするのは簡単ではありません。また、顧客がわざわざ近隣ではなく遠方の事務所を選ぶのは、近隣の事務所にはない強みがあるからです。例えば、経理改善コンサルに圧倒的な強みがある、中堅企業向けの税務・労務のトータルサポートに圧倒的な強みがある、特定の業種へのサポートに圧倒的な強みがある等です。
そうした強みがある、出張対応もできる、という事務所様は遠方の顧客へのサービス提供を開始されても良いのではないでしょうか?
とはいえ、出張対応は難しいという事務所様の方が多いかと思います。その場合考えていただきたいのは、中堅・大手事務所はオンラインを活用して地域顧客にもサービス提供を広げてくる可能性がある、ということです。
その際に、地域の顧問先に選んでもらい続けるために、
・基本の税務会計サービスをきちんと提供する
・制度改正等の情報提供を行う
・業務効率化を行い所内に余力を作ったうえで、経理コンサルや公的支援(補助金・融資申請支援)等の+αのサービスを商品化する
ということを進めていくことが重要です。
弊社会計事務所向け研究会では上記に関する最新情報提供をさせていただいておりますので、ご興味がある方は是非一度お試し参加いただければと存じます。
【執筆者:坂田 知加】