税理士の将来性は「顧問先の未来」で決まる?クライアントと共に成長すべき理由と、伴走支援のポイントを解説

目次

はじめに:2025年、会計事務所の「将来性」が問われる理由 

2025年を目前に控え、会計事務所の経営者の方々から「税理士の将来性は今後どうなるのか」というご相談をいただく機会が非常に増えました。税理士という資格の将来性、ひいては会計事務所の経営の将来性について、多くの方が漠然とした不安を抱えています。本記事では、税理士の将来性について、事務所経営の観点から今後の対策を詳しく解説します。 

税理士業界を取り巻く環境の変化と今後の経営課題 

税理士の将来性に不安が持たれる理由は、AIやクラウド会計ソフトの普及による業務の自動化だけではありません。インボイス制度への対応が一段落し、デジタル化が進む中で、顧問先である中小企業のニーズそのものが変化しています。税理士業界は、顧客の減少とニーズの高度化、事務所スタッフの採用難という経営課題に直面しており、税理士の将来性は事務所の経営戦略に大きく左右される時代に入っています。 

なぜ今、事務所の経営方針を見直す必要があるのか? 

今後の税理士の将来性を考える上で、今、事務所の経営方針を見直す必要があります。なぜなら、記帳代行や申告書作成といった従来型の業務は、AIITの技術によって代替が進み、価格競争に陥る可能性が高いからです。税理士の将来性を確保するためには、他の事務所との差別化を図り、顧客から選ばれる理由を明確にする必要があります。それができなければ、税理士の将来性は厳しいと言わざるを得ません。 

この記事で解説する内容:クライアントと共に成長し続けるためのヒント 

本記事では、税理士の将来性に不安を感じている会計事務所の経営者の方に向けて、「将来性がない」と言われる理由を整理します。その上で、将来性が高い事務所が実践している経営戦略、今後需要が拡大する専門分野、そして経営者が今すぐ着手すべきことを具体的に解説します。この記事を読むことで、税理士の将来性は顧問先の未来を支援する「伴走支援」にあることを理解し、事務所の今後の経営のヒントを得ていただくことができます。 

1. 「税理士の将来性はない」と言われる理由と、会計事務所への経営的影響 

税理士の将来性について悲観的な声が多いことには、明確な理由があります。会計事務所の経営に直結する3つの大きな変化が同時に進んでいるからです。税理士の将来性を考える上で、これらの問題から目をそらすことはできません。現状を認識することが、今後の対策の第一歩となります。 

AIIT化による定型業務の自動化と価格競争の現状 

「税理士の将来性はない」と言われる最大の理由は、AIITの進化です。クラウド会計ソフトの普及により、かつては税理士事務所の主な業務であった仕訳入力や記帳代行は、AIによって自動化が進んでいます。銀行口座やクレジットカードのデータは自動で取り込まれ、AIが勘定科目を提案します。この結果、定型業務にかかる時間は劇的に減少しました。そのため、記帳代行を主なサービスとしてきた事務所は、顧問料の価格競争に巻き込まれています。税理士の将来性は、AIに代替される業務に依存し続ける限り、厳しいと言わざるを得ません。 

税理士業界の構造変化:登録者数の増加と顧客企業の減少問題 

税理士の将来性を考える上で、業界の構造変化も重要な問題です。税理士の登録者数は、税理士試験の合格者や試験免除による資格取得者を含め、微増傾向にあります。一方で、税理士の主な顧客である日本の中小企業の数は、経営者の高齢化や後継者不足を理由に年々減少しています。税理士の数が増え、顧客の数が減っているわけですから、顧問契約の獲得競争は激化します。この需給バランスの変化も、税理士の将来性に影を落とす要因となっています。 

クライアントニーズの高度化と求められる付加価値の変化 

税理士の将来性に影響を与える3つ目の理由は、クライアント(顧問先)のニーズの変化です。AIITの普及により、経営者は自社の財務状況をリアルタイムで把握できるようになりました。そのため、税理士に求める役割は、過去の数字を整理する記帳代行から、未来の経営に対する「相談」や「アドバイス」へと大きくシフトしています。資金調達の相談、補助金の提案、DXの支援など、より高度で専門的な付加価値を税理士は求められています。このニーズの変化に対応できない事務所は、税理士としての将来性が問われることになります。 

2. 【結論】将来性が高い会計事務所が実践する3つの経営戦略 

「税理士の将来性はない」と言われる理由を見てきましたが、結論から言えば、税理士の将来性は事務所の経営戦略次第で大きく変わります。むしろ、AIITの変化をチャンスと捉え、急成長している会計事務所も数多く存在します。税理士の将来性が高いと私が考える事務所が実践している3つの経営戦略を解説します。税理士の今後の生き残りのヒントがここにあります。 

「独占業務」を核に、事務所の専門性を再定義する方法 

税理士の将来性を支えるのは、第一に税理士の独占業務(税務代理・税務書類作成・税務相談)です。AIが進化しても、最終的な税務判断や税務調査への対応は、資格を持った税理士にしかできません。この独占業務を核に据えつつ、事務所の「専門性」を再定義することが重要です。「何でもやります」という総合型の事務所ではなく、「医療法人の経営支援に強い」「相続専門」「国際税務に特化」など、特定の業種や分野での専門性を高める必要があります。専門性を高めることで、他の事務所との差別化が可能になり、税理士としての将来性は安定します。 

AIITを「チャンス」と捉える業務効率化と活用事例 

将来性が高い税理士事務所は、AIITを脅威ではなく「チャンス」と捉えています。クラウド会計ソフトやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を積極的に導入し、記帳代行や申告書作成の補助業務を徹底的に効率化しています。私が支援したある税理士法人では、RPAの導入により入力業務の時間を約70%削減しました。税理士の将来性は、ITの活用で生み出した時間を、いかにして高付加価値な業務に振り分けるかで決まります。AIITは、税理士が人間にしかできない仕事に集中するためのツールです。 

記帳代行から「経営支援パートナー」へのサービスシフト 

税理士の将来性を確実なものにする最大のポイントは、事務所の立ち位置を「記帳代行業者」から「経営支援パートナー」へとシフトすることです。顧問先の経営者は、税金の計算だけを求めているのではありません。経営の悩みを相談できる身近な存在を求めています。税理士は、財務データという経営の根幹を握る唯一の専門家です。そのデータを活かし、資金繰りのアドバイス、経営計画の策定支援、DXのサポートなど、顧問先の未来に伴走するサービスを提供すること。これこそが、AIには代替できない、税理士の今後の将来性の源泉となります。 

3. 税理士の将来性に寄与する!今後需要が拡大する3つの事業と事務所の注力ポイント 

税理士の将来性を高めるためには、今後需要が拡大する専門分野に注力することが有効な戦略です。税務・会計の知識を活かしつつ、高い専門性が求められる分野は、AIによる代替が難しく、税理士の活躍の場が広がっています。ここでは、特に注目すべき3つの事業分野と、事務所が取り組むべきポイントを解説します。 

中小企業の高齢化問題に応える「事業承継・M&A支援」 

税理士の将来性において大きな市場となるのが「事業承継・M&A支援」です。中小企業庁のデータによれば、日本の中小企業経営者の平均年齢は上昇を続けており、多くの企業が今後10年以内に事業承継の時期を迎えます。しかし、後継者不足に悩む企業は少なくありません。税理士は、顧問先の経営状況や財務状況、経営者の個人資産まで把握している最も身近な専門家です。親族内承継の相続税対策から、従業員承継(EBO)、第三者へのM&Aまで、税務・財務の知識を活かしたコンサルティングの需要は非常に高いです。この分野の専門性を高めることは、税理士の将来性に直結します。 

企業のグローバル化を支える「国際税務コンサルティング」 

「国際税務」も、税理士の将来性を考える上で有望な分野です。近年、中小企業でも海外との取引や海外進出は一般化しています。越境EC(インターネットを利用した国際的な電子商取引)を行う個人事業主も増えています。国際税務は、日本の税法だけでなく、租税条約、移転価格税制、現地の税制など、非常に高度で複雑な専門知識が必要とされます。英語力も求められるケースが多く、対応できる税理士の数は限られています。それだけに、国際税務のスキルを持った税理士の需要は高まっており、高い付加価値を提供できる、将来性の高い分野と言えます。 

富裕層のニーズを獲得する「資産税・相続関連サービス」 

税理士の独占業務と親和性が高い「資産税・相続関連サービス」も、将来性が見込める分野です。日本の高齢化が進む中で、相続の発生件数は今後も増加することが予想されます。特に、富裕層と呼ばれる資産家の相続税対策や資産運用に関するニーズは根強く存在します。相続税申告は税理士の重要な業務ですが、それに加えて、生前からの相続対策、遺言執行のサポート、不動産の組み換え提案など、関連するコンサルティングの範囲は広いです。この分野はAIによる自動化が難しく、個人の状況に寄り添った個別の対応が求められるため、税理士の人間としての介在価値が活きる、将来性の高い分野です。 

4. 事務所の未来を創るために経営者が今すぐ着手すべきこと 

税理士の将来性を確保し、事務所の未来を創るためには、経営者が今すぐ着手すべき重要な対策があります。AIの進化や市場の変化をただ傍観していては、事務所の将来性はありません。税理士の将来性は、経営者の行動にかかっています。人材、サービス、マーケティングの3つの観点から解説します。 

人材戦略:変化に対応し活躍できる税理士・スタッフの採用と育成 

税理士の将来性は「人」で決まります。AIを使いこなし、顧客に高付加価値なコンサルティングを提供できる人材の採用と育成が急務です。税理士試験の受験者が減少し若手の採用が難しい中、税理士資格の保有者だけでなく、ITに強い人材、コンサルティング経験者、公認会計士など、多様なスキルを持った人材を積極的に採用する視点が必要です。また、所内のスタッフに対しても、ITツールの研修やコンサルティングの勉強会を開催し、スキルアップを支援する体制が、事務所の将来性を担保します。 

サービス開発:顧問先の課題を解決する高付加価値サービスの作り方 

税理士の将来性を考える上で、従来の「顧問料」の中身を見直す必要があります。記帳代行と申告だけでは、将来性は期待できません。顧問先の経営者が何に悩んでいるのかを深掘りし、その課題を解決する高付加価値サービスを開発することが重要です。例えば、資金調達支援、MAS監査(未来会計)、DX支援、バックオフィスの効率化サポートなどです。私が支援する会計事務所では、顧問先向けの無料経営セミナーを毎月開催し、そこで出た悩みを新たなサービスに繋げています。税理士の将来性は、顧客のニーズに応え続けるサービスの開発力にかかっています。 

マーケティング戦略:選ばれる事務所になるための情報発信と強みの明確化 

理士の将来性を確保するには、良いサービスを作るだけでなく、それを顧客に届ける「マーケティング戦略」が不可欠です。自社の事務所の「強み」や「専門性」を明確にし、ホームページやSEO対策(検索エンジン最適化)、SNS、オンラインセミナーなどを活用して積極的に情報発信を行う必要があります。「相続 税理士」「医療 経営支援」など、見込顧客が検索するキーワードで自社のサイトが上位表示されることは、今後の顧客獲得において非常に重要です。税理士の将来性は、自らの価値を発信し、選ばれる事務所になるための努力で決まります。 

5. よくある質問(Q&A 

税理士の将来性について、会計事務所の経営者の方からよくいただく質問にお答えします。今後の事務所経営の参考にしてください。 

Q. 小規模な会計事務所でも、高付加価値サービスへの転換は可能ですか? 

A. はい、小規模な会計事務所こそ高付加価値サービスへの転換が可能であり、税理士としての将来性を高めるチャンスです。大規模な税理士法人と異なり、小規模事務所は経営の意思決定が速く、小回りが利きます。特定の分野(例:美容室専門、IT企業向けの資金調達支援など)に特化することで、専門性を高めやすいというメリットもあります。所長税理士の経験や強みを活かし、顔の見える関係で経営者に寄り添う「伴走支援」は、小規模事務所だからこそ実現しやすい、将来性の高い戦略です。 

Q. ITツール導入にあたり、どのくらいの投資が必要になりますか? 

A. ITツールへの投資は、事務所の規模や導入するツールによって大きく異なります。しかし、クラウド会計ソフトやコミュニケーションツール(例:Chatwork, Slack)などは、月額数千円から数万円程度で利用できるものが多く、スモールスタートが可能です。税理士の将来性を考えると、IT投資は「コスト」ではなく「未来への投資」です。RPAの導入などは初期費用がかかる場合もありますが、業務の効率化による人件費削減や、新たなサービス提供による売上増加を考慮すれば、十分に回収可能な投資と言えます。無料トライアルなどを活用し、自社に合ったツールを検討することをおすすめします。 

Q. スタッフのITスキル向上は、どのような方法で進めればいいですか? 

A. スタッフのITスキルの向上は、税理士事務所の将来性にとって不可欠です。進め方としては、3つの方法があります。1つ目は、会計ソフトのベンダーが開催する操作研修や無料セミナーを積極的に活用することです。2つ目は、事務所内でITに詳しいスタッフを担当者に任命し、勉強会を定期的に開催するOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。3つ目は、外部のITコンサルタントや私たちのような会計事務所専門のコンサルティング会社に依頼し、体系的な研修を行う方法です。重要なのは、経営者が「IT活用は事務所の将来性に必須」という方針を明確に示し、スタッフが学ぶための時間と環境を確保することです。 

まとめ:変化はチャンス。税理士の将来性はクライアントの未来を創るパートナーになれるかで決まる 

本記事では、税理士の将来性について、会計事務所の経営者の視点で解説してきました。AIの普及、市場の構造変化、ニーズの高度化など、税理士業界を取り巻く環境は大きく変化しています。従来の記帳代行や申告業務に依存する事務所にとって、税理士の将来性は厳しいかもしれません。 

しかし、本記事で紹介したように、この変化は税理士にとって大きなチャンスです。AIITを活用して定型業務から解放され、税理士は人間にしかできない、より付加価値の高い仕事に集中できます。税理士の将来性は、「税金の計算屋」から「クライアントの未来を共に創る経営支援パートナー」へと進化できるかどうかにかかっています。専門性を磨き、人材を育成し、顧客の課題に真摯に向き合うこと。その先にこそ、会計事務所の明るい将来性が開けています。 

 

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