制度変更に伴う顧客離脱を防ぐ!今すぐできる3つの対策

船井総研会計グループの坂田 知加です。

猶予期間が設けられたものの、本年は電子帳簿保存法改正が施行され、来年10月にはインボイス制度が施行される予定と、会計事務所・顧問先に関わる大きな制度変更が続きます。
対応に迫られ苦慮されている事務所もあると思いますが、この制度変更は顧問先獲得のチャンスでもあり、顧問先離脱のピンチでもあります。
国・国税庁が推し進めるデジタル化施策に早期に乗れる事務所ほど顧客からも選ばれ、乗れない事務所は顧客が不安に感じてしまうため、是非皆さまには早期に対応を進めていただければと思います。

そこで今回は、すぐにできる対策を3つお伝えさせていただきます。

1.電子帳簿保存法・インボイス制度に関する情報提供
2.クラウド導入対応
3.IT導入補助金に関する情報提供

1.電子帳簿保存法・インボイス制度に関する情報提供

「制度改正について記載されたニュースレターを全顧問先に渡している」という事務所も少なくないと思います。しかし、経営者に伺うと「何かもらっていたような気はしますが…全部は見ていないですね…」ということが多いです。
まだ「ニュースレターで情報提供をしてもらっている」と認識している顧問先は良いのですが、「何も情報提供してもらっていない」と思ってしまっている顧問先も一定数いるはずです。

本当に小さなことですが、すべき対策としては「打合せ時に担当者から伝える」ということです。
事務所としての対応方針がまだ決まっていないから言えない、制度変更に伴う値上げを検討しているが料金表が定まっていないから言えない…ではなく、「対応方法はまた今度お伝えしますが、このような制度変更が〇月から行われます」ということはしっかり伝えるようにしましょう。ニュースレターの該当箇所をなぞるだけでも良いです。

所長、幹部メンバーは顧問先に伝えられていることがほとんどだと思いますが、監査担当者全員が漏れなく伝えられているかきちんと把握できていますでしょうか?
もし不安がある場合は「9月は制度変更に関する情報提供月間」などと決めて、どのように伝えるかも朝礼や会議等で全社員に共有するようにしてみてください。

2.クラウド導入対応

顧問先の業種等によっては必ずしもクラウドがベストではないこともありますが、電子帳簿保存法・インボイス制度対応のために、クラウドを導入し経理をアナログ(紙)からデジタルにすることが解決策になる顧問先は多いはずです。
顧客自身で対応ができているケースは良いのですが、対応ができていない顧問先にお勧めするクラウドツールを決めておく、クラウドツール導入のサポートプランを用意しておくことが重要です。

全社員等しくクラウドツールの案内、導入サポートができるようになるにはまだ

時間を要するという事務所では、クラウドツールの導入担当者を置くのも一つです。担当者に集中的に導入サポートをしてもらうことで、より効率的に顧問先へのクラウドツール導入を行えるようになります。

3.IT導入補助金に関する情報提供

2022年3月~4月に弊社で開催したIT導入補助金に関するセミナーには480名を超えるご参加がありました。IT導入補助金に関する経営者の関心度の高さがわかる一例ではないでしょうか?
また、経営者の方々とお話していると「実はIT導入補助金を使いたいなと思っているのですが、どうしたら良いですかね」と相談されることもあります。

顧問先がIT導入補助金申請をサポートしてくれる先を探して、ついでに税理士変更も行う…ということにならないように、ご案内はしておきたいところです。

①IT導入補助金の制度、申請の流れを理解しておく
②自社が顧客に進めるクラウドツールで活用する場合の、申請窓口を確認しておく
※各ベンダーがIT導入支援事業者登録をして、申請・導入のサポートを行っています
③IT導入補助金に関する情報提供を行う

今年は会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト導入に活用できる「デジタル化基盤導入枠」も新設されています。
・補助額5~50万円までは補助率3/4、補助額50~350万円までは補助率2/3
・PC・タブレット等のハードウェアにかかる購入費用も補助対象
・クラウド利用料を最大2年分補助
と、かなり補助内容が充実しています。

申請に必要なgBizIDプライムアカウントの取得には2週間程度かかりますので、活用を検討している顧客には早めのご案内が必要です。

制度変更に関する自社の対応方針が決まっていない、職員がクラウド導入に対応できていない、IT導入補助金の申請サポートはしていない、という事務所でも今からやれることはあります。
完璧な対応よりも、スピーディーな情報提供、漏れのない情報提供を意識して対応していただき、顧問先の満足度アップ・顧問先の離脱防止につながれば幸いです。

【執筆者:坂田 知加】

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