データで見る中小企業の動向とポストコロナを見据えた会計事務所の戦略とは?

平素より購読いただき、誠にありがとうございます。
士業支援部の来田です。

「今後、日本は、また自分たちが関わる業界はどうなるのか」

まさに、このメルマガを読まれている皆様にとっての昨今における関心事の中心であると思います。

そこで今回はタイトルにある通り、先般公開された「2021年度版中小企業白書」に基づく中小企業の動向を踏まえつつ、今後の会計事務所の戦略の提言を行いたいと思います。

なお、会計事務所向けの提言の結論はこの3点となります。

●税務会計を基軸とした企業の財務インフラ及び事業戦略の再構築をサポートする!
●黒船の襲来を見据えた自社マーケットの分析と自社商品の再考を行う!
●すべての戦略の基礎であるシェアアップ=一番化戦略に基づく施策を実行する!

まずは、この提言にあたって、公開データより弊社の分析及びその考察をお伝えいたします。

データで見る中小企業の動向

中小企業の資金繰りに関しては、感染症流行による売上げの急激な減少と、それに伴うキャッシュフローの悪化により、2020年第2四半期に大きく下落したものの、第3四半期には大きく回復しました。しかしながら、足元では、資金繰りDI(Diffusion Index) は再び低下していることが本データより伺えます。

出典:2021年度中小企業白書_p32

続いて、中小企業の人手不足の状況を人員の過不足状況を従業員規模別に見たものが下図です。昨今、有効求人倍率は低いものの、従業員規模が大きくなるにつれ、人員が「不足」している企業の割合の割合が高くなる傾向です。

同時に、50名未満の企業においては、過剰となるケースは1割以下であることもわかります。特に「21-50人」規模の企業における雇用状況においては、人員の過不足状況では「適正」と「不足」の差がなく、この企業規模では雇用の流動性は高く、結果、採用の課題はコロナ禍でも継続して課題があると言えます。

出典:2021年度中小企業白書_p58

最後に注目したいデータは、企業規模別、従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移を示したものです。このデータより、中小企業の労働生産性は製造業、非製造業共に、大きな落ち込みはないものの、長らく横ばい傾向が続いていることが分かります。、

出典:2021年度中小企業白書_p136

以上、中小企業の「資金繰り」「人手不足状況」「生産性」のデータを確認してきましたが、結論は下記3点に集約できます。
①資金金繰りの悪化は継続傾向にありつつある中、足元のキャッシュフローの改善がより顕著な課題となる
②景況は低迷しているが、雇用の流動性は継続して起きており、「人手不足」の課題は以前としてある
③ポストコロナを見据えた際、労働生産年齢人口の減少は依然として顕著な課題であり、中小企業においては自社の労働生産性の改善なしの継続的な成長はない

ポストコロナを見据えた会計事務所が取るべき戦略とは?

コロナ禍における中小企業の動向を各種データとともに確認してまいりましたが、こうした動向における考察をもとに、今後の会計事務所がポストコロナを見据えてどのような戦略を取るべきかに関し、お伝えいたします。

●税務会計を基軸とした企業の財務インフラ及び事業戦略の再構築をサポートする!
中小企業の財務状況は損益分岐点比率が高いため、感染症流行のような売上高の急激な変化に弱いことが中小企業の資金繰り動向より分かります。したがって、感染症流行の影響を踏まえ、まずは自社の財務状況をいかに把握し続けるかが重要です。

ワクチン摂取が先行的に進む欧米では、ワクチン摂取と景気においては相関関係を読み取れる中、来たる景況回復及び予期できぬ有事に備えた財務戦略をタイムリーに実行するためには、適切な財務インフラがハード・ソフト両面で必要です。

だからこそ、税務会計の専門家である会計事務所が、今後の事業戦略のための財務インフラを整えつつ、キャッシュフローの適正化やその改善の指導がまさに今、求められています。

●黒船の襲来を見据えた自社マーケットの分析と自社商品の再考を行う!
昨今、独占業務である税務業務の付随業務分野に関し、商圏を越境し、マーケット拡大を行う「黒船」的存在の企業が注目されています。そうした企業は税理士事務所を母体とする企業もあれば、全くの異業種からの参入もあり、とりわけ圧倒的な広告宣伝費とその規模をもって自社の商圏に攻勢戦略を行う特徴があります。

また、近年では監査法人から独立する公認会計士以外に、税務業務を行う通知弁護士の数も平成25年と比較し平成30年時点では150%以上の人数も増えていることから、他の士業業界からの会計業界への参入もますます増えていることがわかります。

しかしながら、ライフサイクルが進む業種・業態においてこうした動きは必然であり、避けようがありません。一方で、自社の商圏をすぐに変更することは困難であり、したがって今こそ自社の商圏を見直し、商圏内の顧客ターゲットにあった商品設計の見直しが最重要経営課題であると言えます。

特に、異業種からの参入ではデジタル・ディスラプター的存在の勃興があります。つまり、新規参入を行う企業が新しいテクノロジーを使用してローエンド商品(低性能・低価格な商品)を開発・改良した結果、既存のハイエンド商品(高性能・高価格な商品)にとって替わる製品を生み出し、マーケティングを展開する現象が至るところで発生しています。近年では顧問価格の継続的な減少や税務会計領域おける付随業務の格安サービスの台頭などがあります。

こうした状況下では、もはや独占業務領域での継続的な事務所拡大戦略は難しく、だからこそ自社の商圏を見直し、その商圏にあったマーケティング戦略、とりわけ商品の見直しが重要となります。

というのも、船井流における差別化の理論においては、価格戦略や販促戦略以上に影響度合いが大きい戦略が商品戦略であり、攻勢するデジタル・ディスラプターに打ち勝つ戦略における大前提の手段となるからです。つまり、「他社商品と本質的に異なり、かつ自社にとって必要な商品である」ということが理解できれば、自ずと顧客の選択肢は自社商品へと向かいます。

なお、直近でも弊社が関与する会計事務所様や業界で注目される事務所様では、顧客の経理体制の再構築を通した財務会計のインフラを整備し、適切な財務戦略の提言及びその実行サポートで従来の顧問費用の2~3倍を獲得することができている事例が多数増えています。

BPOマーケットの領域以外にも、会計領域以外の労務、法務といった横断的な業務領域を包括し、商品力を高めているケースも増えてきており、従来の税務会計サービスの枠に囚われず、「顧客が今、そしてこれから必要になること・困ることは何か」に基づいて商品の見直しをぜひご検討ください。

●すべての戦略の基礎であるシェアアップ=一番化戦略に基づく施策を実行する!
最後に、勃興するデジタル・ディスラプターや大手の税理士法人の増加、ポストコロナを見据えた中小企業の動向を踏まえて勝ち続ける会計事務所が取るべき戦略とは、「自社のマーケットにおける特定のサービス領域で一番となること=シェアアップ戦略」となります。

これまでは、「●年までに○○億円の売上を作る」といった目標がわかりやすい指標となっていますが、近年の競合環境の動向より、早期に「自社の商圏」で「勝てる商品」で一番となり、そのマーケットを抑える=シェアを上げることこそ、最も経営の継続的な発展性に繋がります。

だからこそ、競合環境とメイン顧客である中小企業の動向を踏まえつつ、自社の商圏及び商品の見直しを早期に行い、シェアアップ戦略を取ることをおすすめします。

最後に

この瞬間も、コロナ禍を生き抜くためのサポートを行う会計事務所の皆様は中小企業の経営者様にとって、大きな支柱であり、代え難いパートナーであると思います。その尽力において、最大の敬意をもって深く感謝いたします。

2021年も、すでに半分が終わった今、本日お伝えした内容が下期以降の皆様の事務所経営において参考になれば幸いでございます。

そして、皆様の継続的なサービスの発展と事務所の成長が、コロナ禍で大きなダメージをおった日本経済の回復の土台となると信じております。

また弊社では皆様の事務所経営に向けてサポートできるよう、各種セミナーや無料の個別相談などをご提供しております。

ご興味ある方はぜひご活用ください。
ご拝読いただいき、誠にありがとうございました。

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【執筆者:来田卓哉】

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